フォンタン患者の運動療法(現在エビデンスと将来の方向性)2007年の論文を読む

論文

T. Takken 他

Exercise prescription for patients with a Fontan circulation: current evidence and future directions

Neth Heart J. 2007 Apr; 15(4): 142–147

です。

本論文の目的

フォンタン循環患者の運動トレーニングの効果に関する文献のレビューです。2006年以前に発表された論文が対象です。

体調の良いフォンタン患者の運動効果についての論文6本をまとめています。

フォンタン循環とは

心臓に問題があるため、血液の流れを外科手術で変えた状態です。体から心臓に帰ってきた血液を心臓を通さずに肺につなげた状態になっています。

文献検索方法

この論文で過去の研究を検索している方法です。

Medline、Embase、およびSportdiscusデータベースを使用しています。期間は1966年から2006年11月まで。 検索用語は、「体力」、「運動トレーニング」、「心臓リハビリテーション」、「運動」、「運動能力」、「運動耐性」、「フォンタン」および「単脳室」としています。

検索対象期間の長さにも関わらず、2001年以降の文献しかヒットしてないようです。この分野が注目されたのは最近ということなのでしょう。

分析:過去事例でやっていることまとめ

f:id:lemondh:20200217114918p:plain

過去事例の条件まとめ

運動強度は50-80%で、時間は20分から1時間、週2回から3回を、3か月以上継続しているようです。内容は自転車やウオーキングと筋トレです。

被験者人数はいずれも10人程度と少な目です。

論文の結論

6つの発表されたすべての研究で、運動トレーニングがフォンタン循環患者の運動能力を改善できることが示されたとしています。(指標によっては、顕著な改善とは言えないという結果もありますが、6研究がそれぞれ何らかの改善をしているという意味)

ただし、6研究は小規模なものなので、より厳密な研究デザイン(被験者を増やす、コントロールグループなど)と、より長期間の観察などの更なる研究が必要という結論になっています。

読んでの感想

運動しているので、能力が改善しているのは予想どおりだと思います。むしろ悪影響はないのかということが気になります。

このレベルの運動ができるということは、よい状態の患者だと思われますので、そうでない人も含めて患者の状態に応じて運動の設計ができるように(論文にも記載のとおり)さらなる研究が必要だと思います。