先天性心疾患フォンタン患者 呼吸筋トレーニングで機能改善可能? 2018年の論文

先天性心疾患に関する論文を読んでいます。呼吸筋トレーニングの効果について論文を見てみます。2018年のイタリアとアメリカからの論文です。

 

 

論文

Respiratory Training Late After Fontan Intervention: Impact on Cardiorespiratory Performance


Pediatric Cardiology (2018) 39:695–704

著者

Lamia Ait Ali1,2 · Alessandro Pingitore1 · Paolo Piaggi5 · Fabio Brucini1 · Mirko Passera1 · Marco Marotta2 ·
Alessandra Cadoni3 · Claudio Passino2,4 · Giosuè Catapano2 · Pierluigi Festa2

著者所属

1.Clinical Physiology Institute, CNR, Via Moruzzi 1, 56124, Pisa, Italy.

2.Fondazione G. Monasterio, Regione Toscana, Pisa, Italy.

3.Clinical Physiology Institute, CNR, Via Moruzzi 1, 56124, Pisa, Italy.

4.National Institute of Diabetes and Digestive and Kidney Disease, National Institutes of Health, Phoenix, AZ, USA.

5.Pediatric Cardiology, Brotzu Hospital, Cagliari, Italy.

6.Institute of Life Sciences, Scuola Superiore Sant'Anna, Pisa, Italy.

まとめ

 呼吸法のトレーニング(Controlled Respiratory Training)によって、フォンタン循環の問題が改善することを示しています。

具体的には、

 安静時心拍数の低下(代謝能力の改善

 心循環反応の改善

 運動の持続時間の大幅な増加

などが観測されました。

被験者

参加者は16人の思春期フォンタン患者(17歳5±±3.8歳)で、日常のフォローアップのために外来診療所に通っている人たちです。

NYHAクラスI(身体活動に制限がない人)です。

患者はトレーニングあり(10人)とトレーニングなし(6人)に分けて比較しています。

 

訓練方法

吸う時間の2倍の時間ではきます。吸う動作につれて、呼吸に使う部分を、横隔膜を下げ、胸郭を開いて拡張し、鎖骨呼吸で終わるようにします。

3か月間週2回2時間 14回のトレーニングをしています。

実技だけではなく、呼吸器系の解剖学と生理学、呼吸制御などの理論も教えています。

被験者は、自宅でも呼吸筋トレーニングを行うように言われていて、携帯電話等を使って励まされていたと書かれています。

結論

 著者は、効果を最適化するためには、条件を増やして、更なる研究が必要だと述べています。

感想

 普段何気なくやっている呼吸も、適切な呼吸方法があるということが驚きです。

特に呼吸能力に制限がある患者は、より良い呼吸をすることで、自分の身体能力を最大限利用できます。そして、将来に起こる障害を少しでも緩和できれば、とても良いことだと思います。

一度良い呼吸方法を覚えれば、継続してやりやすそうな点もよいと思います。

 

ただし、小さい子供に呼吸法を教えるのは至難の業だと思います。

素直にやってくれる子供ならいいのですが。

この論文では、17歳前後を対象にしているので、ちゃんとやってくれると思います。

 

 フォンタン患者はうつなどのメンタル問題が頻繁にみられると書かれているのは気になりました。(本論文の主題ではありませんが)

 

論文情報

 Pediatric Cardiology 誌は乳児、子供、および青年の心疾患のすべての側面に関する雑誌です。インパクトファクターは 1.564 (2019)です。

 

リンク

link.springer.com