先天性心疾患の重症度診断に深層学習を使うと医者よりも性能がよい?(三重大学)
三重大学から、先天的に心臓の左右間の壁に穴が開いている症例の深刻度をX線画像から判定するタスクに深層学習を使った結果が発表されています。
(TechOnNatureに書いた内容をこちらにも転記したものです)
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個人的理解
X線画像から疾患の深刻度を判別する目的です。深刻度は、肺体血流比で定義しているようです。
X線画像から、カテーテルで判別した結果を教師として転移学習して求めています。(肺体血流比を求めているのか、深刻か非深刻かの2値判定なのかは不明)
診断一致率は、3人の認定小児心臓専門医と比較しています。
カテーテル実施の1か月前以内にX線撮影している患者のデータを使っています。(657人の患者に対して行われた1031件)そのうち100カテーテル(78人分)を検証用データとしてランダムサンプリングしています。
人の結果が100問中49正解に対して、この処理の結果は100問中64正解で処理の方がうわまったという結果です。
肺体血流比とは、心臓から肺に行く血液と、体に行く血液の比です。
心臓に穴が開いてない場合、肺に行った血液が、心臓に帰ってきて、そのまま体に行くということで一本道で連続であるため、両者は同量になって肺体血流比は1になります。
左右間に穴が開いていると、本来体に行くべき血が肺の方に流れて行ってしまうので、肺体血流比は1より大きくなるようです。
Fick-derived pulmonary to systemic flow ratio:カテーテル検査で求めた肺体血流比
理解が難しかった点
X線から推定するのがベストか?
肺体血流比をX線画像から計測するのが、実用上一番よい方法なのかはよくわかりませんでした。心臓の超音波でも計測できるとの報告もあるようです。
超音波画像は、学習するのが難しそうなので、X線にしたという可能性もあるかもしれません。
人間がよくやっている作業なのか?
医者がX線からの肺体血流比計測をよくやっているのかがわかっていません。X線だけで心臓超音波をやらないというのはあまりなさそうに思えます。このタスクに限定すれば人よりも高精度といえると思いますが、人があまりやってない作業だと、比較はフェアではないかもしれません。
いずれにしても、人と機械が競争することにはあまり意味はなく、ある目的があったときに、機械が得意な作業を採用して高精度に達成可能ならば、有意義だと思います。