フォンタンを機械で補助する

フォンタンでは、循環に右室の助けがありません。これを何とか補助できれば、通常の心臓に近付くのではないかという夢があります。これについて、論文を読んでみました。

現時点では、まだ基礎研究段階で、沢山あるアイディアのうちの一つです。

 

 

論文

University of Michigan Medical Schoolの論文です。

 

Mechanical Circulatory Support for the Failing Fontan: Conversion to Assisted Single Ventricle Circulation—Preliminary Observations
Syed M. Peer, 他

 

World Journal for Pediatric and Congenital Heart Surgery

Vol 9, Issue 1, 2018

 

リンク

https://journals.sagepub.com/doi/10.1177/2150135117733968


内容

目的と手段

フォンタン循環に問題が起こった時に、補助装置をつけて対応する方法の基礎検討です。

4頭の豚を人為的に単心室状態にしたのち、機械的補助をつけて検証をしています。

 

フォンタンの機械循環補助研究のこれまで

フォンタン循環の機械的循環サポートは、依然として困難なままと書かれています。

過去のよくある手法としては、大まかに言って下の図の星印の位置に補助ポンプをつけるというものだそうです(静脈と肺動脈が合わさる近辺)。これはうまくいっていないという認識の下で、この研究を行っています。

 

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フォンタン循環補助ポンプの位置例

 

やったこと

 

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この研究での循環補助ポンプの接続方法

この研究では、上図の位置に循環を補助する装置をつけています。

フォンタンをもとに戻して、心臓の中で酸素の少ない血と多い血が混ざる状態にします。そこで左心房からポンプに血液を取り込み、肺動脈と体動脈両方に血液を送ります。右室から出てくる血管はふさぎますが、左室から出てくる血管はふさぎません。

体循環は、左心室から自力で送り出す血液と、ポンプからの血液両方が流れていきます。肺循環はポンプからの血液のみです。

本研究では心室中隔には穴が開いていません。また、右心房と右心室の間にある弁を除去しています。右心室には出口がないので、血液は流れていきません。

図の青い矢印のように心房中隔の穴から血液が右から左に流れていきます。

なぜこうするのか

  • フォンタン循環の停止で、静脈系の圧力を下げることができる
  • フォンタン循環の動物はいないので、フォンタンを残した状態の動物実験ができない
  • 既存のポンプが左室用で右室に使うには強すぎる
  • 右室用の低圧で大流量のポンプが難しい

 

結果

豚4匹を手術してから2時間補助ポンプを使って生かすことができました。

肺循環と体循環の割合を変えて、肺動脈圧が上昇しないか調べています。

静脈圧が適正値にあることを確認しました。

 

血液が混ざって問題ないのか?

「静脈の鬱血を緩和し心拍出量を増加させることにより、軽度の動脈酸素不足の悪影響を相殺できる」との主張です。

開窓フォンタンの場合はSpO2が85%程度の人もいて、臨床的には問題ない。また、ポンプを付けたら抗凝固療法になるので、低酸素でも凝固しにくいと記載されています。

感想

タイトルにもあるように、まだ研究初期の検討だと思います。

フォンタン循環をもとに戻して、高酸素と低酸素の血液を混ぜるという点に驚きました。素人考えで、以前、開窓フォンタンでも、「せっかく分けたのに、また混ぜるのか」と思ったことを思い出しました。しかし、よく考えてみると、機械補助がある場合とない場合では、条件が違っているので、答えが変わってもおかしくありません。

この研究のように、幅広い候補から最適な方法を見つけていくことが必要だと思います。

それから、フォンタン循環の動物はいないということで、直接的に動物実験ができないという問題があることも、想像していませんでした。いわれてみれば、様々な場所が長期にわたって変化した場合に、それを模擬することは難しいですね。

おそらく、この研究の範囲からはずれますが、心室中隔欠損があった場合に、血液の流れがどうなるのか気になります。