フォンタンの吸気筋トレーニングは効果がある(2017年の論文)

先天性心疾患の運動について調べています。

運動の中には、有酸素運動、筋トレ、呼吸筋トレーニング、柔軟等があると思います。この中で一般になじみのない運動として呼吸筋トレーニングがあります。

前回の

フォンタンの運動「フォンタン アメリカ心臓協会AHAの科学的声明」を読む その8

 の中でも、フォンタンの呼吸筋トレーニングは効果が期待できるとされていました。

そこで、呼吸筋トレーニングについて調べてみました。2017年の論文です。

 

 

論文情報

Inspiratory Muscle Training Is Associated With Improved Inspiratory Muscle Strength, Resting Cardiac Output, and the Ventilatory Efficiency of Exercise in Patients With a Fontan Circulation

Karina Laohachai他著

JAHA (Journal of the American Heart Association) August 2, 2017 Vol 6, Issue 8

 

リンク

https://www.ahajournals.org/doi/10.1161/JAHA.117.005750

まとめ

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吸気筋トレーニングの方法と効果

 

この論文はフォンタン患者の吸気筋トレーニングの初報告

 

参加者

  • 非有窓TCPCフォンタン23人(16±2歳)
  • オーストラリア、シドニーのウェストミードにある小児病院
  • 心室機能不全と房室弁逆流が軽い人
  • 不整脈、筋骨格疾患、知的障害がない

 

方法

  • 毎日30分間吸気筋トレーニングを自宅で6週間行う
  • 6週間中3回病院を訪問
  • 以下の機械を使ってトレーニング実施
  • 吸気負荷は、最大吸気圧(MIP)の30%に設定

 

結果

  • 最大呼気圧は変化せず
  • 最大吸気圧が36±24 cm H2O(61±46%)改善
  • 換気効率は改善(34.2±7.8から32.2±5.6へ、P = 0.04)

 

運動心臓MRIを受けた人々(23名の参加者のうち14名)では、以下が増加

  • 安静時心拍出量(4.2±1.2から4.5±1.0 L / min、P = 0.03)
  • 駆出率(50.1±4.3から52.8±6.1%、P = 0.03)

以下は変わらず

  • 安静時とピーク時の心拍数
  • 大動脈と肺の血流

安静時心拍出量の改善の原因は、心臓前の血圧の影響にあると考えられてきたが、この研究では、血圧は変化してなかった(他の原因の可能性がある)

=今後の研究課題

 

結論

6週間の吸気筋トレーニングは、若いフォンタン患者の吸気筋力の改善、運動の換気効率、安静時心拍出量に関連しています。

吸気筋トレーニングは、フォンタン患者の現在の管理に対する単純で有益な追加である可能性があり、潜在的に運動不耐性および長期の罹患率と死亡率を低下させます。

 

成人の心不全試験では最初の6週間の改善が最も大きく、その後は伸び悩む

したがって、吸気筋トレーニングの長期的影響や、中止後の退行の影響について、確固たる結論を出すことはできない

 

感想

吸気筋トレーニングで吸気が改善していますが、呼気は改善していません。(ある意味当たり前かもしれませんが、吸うのとはくので違うということでしょうか。曲げる筋肉と伸ばす筋肉が違うのと同様に)

 

改善のレベルがどのくらいなのか(ほんのちょっとの改善か、劇的な改善か)については、調べられていません。またこの研究に参加した人は、比較的状態が良い人である点に注意が必要です。

 一日、30分毎日やるのは、結構大変ですね。仮にテレビを見ながらとかでも大丈夫だったとしても。もっと短い時間でできるとよいと思いました。

この研究で使っている器具は4000円程度で買えるようです。(もちろん自己流のトレーニングではなく、専門家の指導の下に行うべきと思います。)

 

文献情報

Journal of the American Heart Associationはアメリカ心臓協会(AHA)の論文誌です。査読付きのオープンアクセスです。インパクトファクター4.45 (2018年)です。