成人先天性心疾患の栄養と食事(日本) 聖路加国際病院の調査(2019) 1

先天性心疾患患者の食事と健康について気になります。

聖路加国際病院の調査結果が Journal of Cardiologyに掲載されていました。

食事、栄養面と筋トレの効果についての論文ですが、ここでは食事栄養面のデータを見てみます。

論文情報

Sarcopenia in adults with congenital heart disease: Nutritional status, dietary intake, and resistance training

Yumi Shiina 他著

Journal of Cardiology Volume 74, Issue 1 (July 2019)

 

リンク

Sarcopenia in adults with congenital heart disease: Nutritional status, dietary intake, and resistance training - ScienceDirect

まとめ

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先天性心疾患患者の食事と日本人平均との比較

参加者

聖路加国際病院への通院者172名でその内訳は

 102名 NYHA I(心不全はあるが活動制限なし)
   66名 NYHA II(軽〰中度の制限あり、安静時症状なし)
     4名 NYHA III(高度な身体活動制限あり 安静時は症状なし)

  男性 60人(34.5±13.7(18–68)歳)

  女性112人(36.0±12.0(19–70)歳)

そのうち

 51人:単純な先天性心疾患

 121人:複雑な先天性心疾患

 

結果

被験者は骨格筋量が日本人平均よりも少なかった

食べられないから骨格筋量が少ないわけではない

今回の被験者は日本人平均に比べて

(1)野菜、果物、魚、乳製品の摂取量が多い

(2)穀物、芋、肉の摂取量が少ない

(3)塩分摂取量は日本人平均と同等だが厚生労働省の目標量を超えている

     基準値は食塩相当量で大人男性7.5g未満、大人女性6.6g未満

     今回の被験者は男性10.6 ± 2.4g 女性9.7 ± 0.6g

 

先天性心疾患患者内の比較では、男性について

骨格筋量弱者はそうでない人に比べて、

 カロリー、脂肪、炭水化物、塩の摂取量が多かった

 たんぱく質は同じだった

女性では、両者の違いがなかった。

 

感想

食事に関連する研究は、食文化の違いのため、海外の事例をそのまま参考にするのは無理かなと思っていました。そこでこの論文に注目していました。

乱暴に言ってしまうと、今回の被験者は日本人の平均よりも理想に近い食事をしているように思えます。

考えてみれば当たり前の結果かもしれません。他の人よりも健康に気を付けている人が多いでしょうし、食事もちゃんと考えて食べている人が多いと思います。

しかし、それでも骨格筋量が少なくなっている人がいるということは、平均的な食事では、不十分ということを示している可能性があります。仮にそうだとすると、先天性心疾患患者が体力を維持するのに必要な食べ物を明らかにして、理想の食事モデルを作る必要があると思います。

一つ気になったのは塩分の量です。多くの人が気をつけていると思うのですが、それでも多めになっています。塩を少なくするのはそれほど難しいのでしょう。

Journal of Cardiologyは日本心臓病学会の英文学会誌です。 インパクトファクターは2.246(2019)です。 発行1年経過でオープンアクセスになります。