軽度から中等度の先天性心疾患の高齢者は、神経認知障害リスクがある
先天性心疾患の脳機能への影響が気になります。
軽度から中等度の先天性心疾患の高齢者は、認知機能テストのスコアが一般者よりも劣るとの論文がありました。Stanford University School of Medicineの論文です。
論文情報
Adults With Mild‐to‐Moderate Congenital Heart Disease Demonstrate Measurable Neurocognitive Deficits
Melissa L. Perrotta他著
Journal of the American Heart Association. 2020;9
リンク
https://www.ahajournals.org/doi/10.1161/JAHA.119.015379
まとめ
テスト方法の説明図が論文中にないため、別調査をもとに図示しました
UK Biobankに登録している成人先天性心疾患患者(年齢中央値57歳)と一般者(同58歳)で比較
白人が94.2%
先天性心疾患患者1020人と一般者497983人
6種類のテストを実施。そのうち3種類で有意に先天性心疾患者の成績の方が悪かった
ただし、脳卒中と冠動脈疾患者を除くと、統計的に優位な差ではなくなった(依然としてスコアは低い)
低スコアは脳血管疾患と心血管疾患によって引き起こされているようだ
問題がある項目
- 処理速度
- 注意
- 認知の柔軟性
この研究の意義
- 先行論文で後天性心疾患や、重度の先天性心疾患の神経認知への悪影響が既報告
- 中度や軽度の先天性心疾患の分析が本論文の新規性
この研究の限界
- 被験者が高齢のため、かなり前の診療(現在とは違う)の影響を受けている可能性がある
- 対象被験者の一般者のスコアが平均よりも高すぎる可能性がある
- 6つのテストの実施時期が数年単位で離れている
感想
様々なリスクが判明し、予防方法が出来ることを期待して読んでいます。
本論文は、高齢先天性心疾患=認知機能に問題ありというわけではないように見えます。先天性心疾患者は脳血管などに問題がある場合が多いため、認知機能に影響が出るという流れのようです。
論文の本筋ではないのですが、UK Biobankというものがあるのを初めて知りました。このようなデータを元に、色々な病気の傾向がわかって、治療につながる研究が前進してほしいなと思います。