先天性心疾患の学業成績(米ノースカロライナの調査)
先天性心疾患の知的面の発達の問題が気になります。先天性心疾患は軽度であっても、学業成績が基準以下の人の割合は、重度の人と変わらない。この人に支援が行き届いていない可能性があるという論文がありました。
論文情報
Academic Outcomes in Children With Congenital Heart Defects
A Population-Based Cohort Study
リンク
https://www.ahajournals.org/doi/full/10.1161/CIRCOUTCOMES.116.003074
まとめ
過去研究との違い
- 過去の研究は重度の先天性心疾患患者対象か、手間のかかる検査を使っていた
- ノースカロライナ州の出生統計を使うことで、多数のデータを集められる
- ノースカロライナ州では、3年生から8年生までのすべての公立学校の生徒に、読解と数学の学年末テストが実施
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過去の認識
過去は軽度または中等度の心疾患の子供の大多数は発達障害を持っていないと考えられてきた
対象者
- 1998年から2003年に生まれた先天性心疾患の子供2807人と、それ以外の子供6355人の学業成績を比較
- 3年生時を対象にしている
- 子供は公立学校に通う人のみ
- 染色体異常のある人は除外
- 先天性心疾患のうち463人(16.5%)は重度であり、2344は重度でなかった
結果
- 先天性心疾患者はそれ以外よりも学業成績が低い人の割合が多い
- 3年生に留年する人の割合は変わらなかった
- 注意)アメリカの多くの州では、4年生になるためには、ある程度の読みが出来ないといけない法律があるそうです。
- 心疾患が軽度であっても、学業成績に影響がある可能性がある。
- 軽度の人は、追加の教育サービスから漏れている場合があるので対策が必要
学業成績が悪くなる理由は現在不明のまま
- 手術の影響
- 遺伝子の問題
- 酸素不足
- 麻酔
- 心臓バイパスなど
重度の先天性心疾患の定義
以下の症状があること、
大動脈縮窄症、右旋性大血管転位、両大血管右室起始、エプスタイン奇形、左心低形成、大動脈弓離断、肺動脈弁閉鎖症、単心室、ファロー四徴症、総肺静脈還流異常症、三尖弁閉鎖症、総動脈幹症
感想
先天性心疾患者の学業成績が低い割合が高いという研究は多いです。この論文では、軽度の心疾患者も、学業成績不振の割合は重度と大差ないのに、支援を受けている人が少ないということがポイントのようです。
支援を受けるかどうかは、心疾患によらず学業成績で決めていれば、支援を受ける人の割合は同じになりそうにも思います。
おそらく、重度の心疾患者には、支援への特別な道筋があるということなのでしょう。
日本では、心疾患患者への特別な知的支援はあまり聞かないような気がします。早い段階から知能面の成長支援をすることで、成人後の自立能力を高める活動が欲しいと思います。