フォンタン循環患者のリンパ管の変形 デンマークの研究(2019)

脚を圧迫することで循環を補助する効果について興味があり調べています。

体には、血流以外にもリンパの流れもあります。足マッサージの効果として、リンパの流れを助けるということもありそうです。

リンパはあまりなじみがなく、よくわかっていないので、論文を読んでいます。

フォンタン患者のリンパ管が変形しているという論文がありました。2019年デンマークの研究です。

論文情報

Morphology and Function of the Lymphatic Vasculature in Patients With a Fontan Circulation
Sheyanth Mohanakumar他著

Circulation: Cardiovascular Imaging. 2019;12

 

リンク

https://www.ahajournals.org/doi/full/10.1161/CIRCIMAGING.118.008074

 

まとめ

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フォンタン患者のリンパの流れ

被験者

オーフス大学病院(デンマーク)18歳以上のフォンタン者と一般者の比較

それぞれ10人ずつ

 一般者はフォンタン患者一人一人と年齢、性別を一致させて選抜

 フォンタン者は状態良好な人

方法

  • 脚下部のリンパ管の流れを近赤外線蛍光イメージングを使って観察する
  • MRIで首から下のリンパ管の形を観察する(フォンタン者8人と一般10人)

結果

流れ

フォンタンの方が圧力が低く、収縮頻度が多い。

リンパがたまるまでの時間が短い(=?リンパの量が多い)

    フォンタン   一般
下腿リンパ管のポンプ圧 mm Hg 50.8±3.1 < 60.3±2.8
収縮頻度 1/分 0.8±0.1 > 0.5±0.1
補充時間 195±61 < 378±76

補充時間とは、手でリンパ管の中を全て送った後にもう一度リンパが満たされるまでの時間です。

胸管(胸にあるリンパの管)が曲がりくねっている(5人)

肝臓周辺に体液の蓄積(多数)

肩、胸部、腹壁に異常なリンパ側枝(4人)

胸管の直径は同じ(2.7mm)

管の変形と流れの観測結果に関係(曲がっていると流れが悪くなるなど)は見つけられなかった

 

元の論文には、写真が載っていてわかりやすいのでご覧ください。

真ん中あたりの緑色で着色している画像です。A-Jがフォンタン、K-Tが一般者です。A-Jの方が緑線がくねくねしている人が多いように見えます。

 

論文の結論

フォンタン患者のリンパの流れ低下を実証した

この方法で、フォンタン循環を分析して理解することが可能

 

感想

状態がよいフォンタン者でもリンパが曲がりくねっているなど影響が出ています。これによって、将来よくない影響が出てくる可能性があるのでしょう。

一方で、フォンタンのリンパへの影響と、リンパの流れの変化が起こす問題、その対処法については、まだまだ研究途上のように見えます。

  この論文でも、変形と流れの関係は計測できていません。

リンパは学校であまり習わない(脂肪の吸収のところくらい??)こともあって、なじみがありません。どこから始まってどこで終わるのかも知りませんでした。しかし体の中での流れということで、心疾患との関連が大きそうです。

リンパ研究についても、さらに調べてみたいと思いました。