小児はフロセミド(ラシックス)で骨折のリスクが増える可能性がある

先天性心疾患の長期リスクに興味があります。

フロセミド(利尿剤)と骨折の相関関係についての論文がありました。2018年の論文です。

 

論文情報

Increased Fracture Risk with Furosemide Use in Children with Congenital Heart Disease

Ji Haeng Heo他著

The Journal of Pediatrics Volume 199, August 2018

リンク

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC6733257/

 

まとめ

フロセミド処方者の骨折リスク

強力な利尿薬であるフロセミド(ラシックス)

高カルシウム尿症の発生率の上昇に関連

骨折との関係を調査

 

先天性心疾患、心筋症、または心不全と診断された12歳未満の小児患者

2008〜2014年 テキサス保険請求のデータを分析

以下に分類して比較

  • フロセミド頻度大 年間256日以上
  • フロセミド処方者 年間256日未満
  • フロセミドなし  フロセミドを処方されていない人 他利尿剤処方を含む

 

骨折の発生率

フロセミド頻度大(9.1%; 254人中23人)

フロセミド処方者(7.2%; 724人中52人)

フロセミドなし    ( 5.0%; 2934人中の148人)

 

フロセミド頻度大者は未使用者よりも骨折リスクが56%大きくなる

ただし、フロセミドと骨折の因果関係の証明にはなってない

注意点

処方されていても飲んでいない人は区別できない

感想

フロセミドを常用している子供は骨折リスクが一般者よりも高いとの結果でした。

ワーファリンも飲んでいる場合には、特に怪我に対しての注意をしている場合が多いと思います。けれども、実際には、体力やバランスが悪く、転倒が多いようにも思います。

骨折リスクが高く、ちょっとした転倒でも骨折するとすれば、気になる結果です。

成人になった後の骨強度の問題も気になります。

ケガをなくすことは不可能ですが、大けがはしないでもらいたいと思います。

 

フォンタン者が高地に住むと悪影響がある?

フォンタン者と高地の関係について調べています。

先日は、短期間の滞在の問題に関する論文を読みました。今度は、高地居住の影響についての論文を読んでみました。

2013年 アメリカの論文です。

論文情報

Living at Altitude Adversely Affects Survival Among Patients With a Fontan Procedure

  (高地での生活は、フォンタン者の生存に悪影響がある)

Joy T. Johnson

(Primary Children's Medical Center, University of Utah, Salt Lake City)

他著

 

Journal of the American College of Cardiology

 Volume 61, Issue 12, 26 March 2013

リンク

https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0735109713002556

 

まとめ

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高地居住の悪影響
分析条件

標高1500m(5000フィート)の病院のデータ

現在は成人年齢になっている患者について分析

103人がフォンタンを受け、70人が成人した

住所の郵便番号から居住標高を推定

 

分析結果

高地居住は肺血管抵抗を上昇させる

 

血栓 48%

肝臓異常 44%

タンパク質喪失性腸症 27%

 

タンパク質喪失性腸症の発生率は低地で生活している人の2倍

血栓塞栓症の発生率が非常に高い

成長障害と運動耐容能の低下の報告もある

 

注意点

高地居住者のデータはある一つの施設に通っている人のデータのみ

低地居住者との比較は、他論文の低地居住者データを使っている

 

感想

長期的に高地に住むことはフォンタン者にとってリスクがあるとの論文です。

20年後の死亡や移植がない人の割合が低地居住者に比べてとても低くなっています。

また、高地と言っても1000m台なので、高山病にかかるほどの高さではありません。

そうは言っても、住む場所を選べない場合には困ってしまいます。

引っ越ししなくても、何とかなる方法もありそうですが、(可能な限り酸素をつけるなど)どうなのでしょうか?

引き続き色々と調べてみたいと思います。

 

fontan者が行ってもよい高地はどこまでか? 場所ごとの気圧は?

フォンタン者は高地に行ってはいけないと言われています。

どのくらいまでなら良いかははっきり言われていません。

 

色々な条件での気圧変化について調べてまとめました。

 

個人的に医師から言われた事

  • 登山はしてはいけない
    • 登山禁止の具体的標高の指示はうけていない
  • 一方、飛行機は与圧されているので問題ない

気圧変化のまとめ

気圧が変化しそうな場合毎のおおよその変化をまとめました。

以下の条件です。

  • 標高が高い場所
  • 飛行機の中
  • 気象

 

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気圧の変化量
図の説明

オレンジ下向き矢印の左側が気圧の値です。

各気圧について、どのような条件で起こるのかを羅列してみました。

標高0mの時に起こる気圧の低下幅は、最大で100から150hPaの様です。

標高が上がるにつれて、10m上昇で1hPa 下がるようです。

飛行機の中は0.8気圧まで与圧されている様です。

そうすると、飛行機の中は標高2000m地点の気圧と同レベルということになります。

仮に飛行機に乗ってよいとすると、2000m程度までは短時間滞在しても大丈夫ということになります。

感想

飛行機の中は、標高2000m程度の気圧ということで、思っていたよりも低かったです。

実際に飛行機に乗ったことがありましたが、その時には問題はありませんでした。

ただし、長時間滞在するとなると、条件が変わってくると思うので、’さらに調べていきたいと思います。

フォンタン者が高地に短期滞在したときの反応 スイスの論文

先天性心疾患者が標高が高いところに行ってよいのか気になります。スイスの研究でフォンタン者が高地に短期滞在した効果についての論文がありました。

論文情報

Cardiopulmonary adaptation to short-term high altitude exposure in adult Fontan patientsts

(成人フォンタン者の短時間高地滞在時の心肺の適用反応)

 

Roger Staempfli(ベルン大学)他著

Heart 2016;102:1296-1301

リンク

https://heart.bmj.com/content/102/16/1296

 

まとめ

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フォンタン者が短時間高地に行った影響の調査

 

16人のフォンタン者と14人の一般者ユングフラウヨッホ(3454m)に連れていく

滞在時間は6時間

低地(ベルン)と高地(ユングフラウヨッホ)で安静時および運動時の肺血流量を測定

高地での運動能力の低下はフォンタン者も一般とあまり変わらない

高地に行ったことによる重大な悪影響はなかった

長期滞在は悪影響を及ぼす可能性がある

被験者が少ない点に注意

 

感想

スイスっぽい研究です。

数時間の滞在であれば、3500m級の高地でも問題はないとの結論で驚きました。

心拍出量が低下せず、運動能力の低下も一般者と同じなので、問題ないという結論の様です。

 (本当にその判断が正しいのかはよくわかりませんでした)

長期間の滞在は問題発生があるとの記述なので、高地に住み続けるのはリスクがあるようです。

関連の論文をさらに読んでみたいと思いました。

 

フォンタン児の睡眠障害と神経発達の問題の関係

睡眠の質が良くないような気がしています。

フォンタン児の睡眠と神経発達障害の論文が発表されていました。

同グループから以前にも論文化されていて、読んでいました。

先天性心疾患者以外でも、睡眠に問題があれば、悪影響があると思います。

 

論文情報

Association Between Sleep Disturbances With Neurodevelopmental Problems and Decreased Health‐Related Quality of Life in Children With Fontan Circulation

(フォンタン循環の子供における睡眠障害と神経発達障害と健康関連の生活の質の低下との関連)

Kirstin Knobbe(アリゾナ大学)他著

Journal of the American Heart Association  2021 Vol 10, Issue 21

リンク

https://www.ahajournals.org/doi/10.1161/JAHA.121.021749

 

まとめ

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睡眠障害と神経障害の関係

フォンタン 558人の子供(6〜18歳)

フォンタン横断研究のデータを利用

自己申告で睡眠障害を調査

睡眠障害の割合

 親の報告=11%

 本人の報告=15%

 一般青年の場合=12%

睡眠障害のある人が高リスクな疾患等

  • 不安、うつ病
  • 注意の問題
  • 行動の問題
  • 発達遅延
  • 発話の問題
  • QOLの悪化

 

追加情報

2020年に同じグループから別雑誌に先天性心疾患者の睡眠時無呼吸と発達の問題についての論文が出ています。

今回との違いはフォンタンに注目した点と、複数病院の患者も調査に含めている点(前回参加者30人 今回参加者558人)、睡眠時無呼吸以外も含む点です。

 

lemondh.hatenablog.jp

感想

フォンタンの方が睡眠障害の割合が少しだけ高いようですが、因果関係は不明です。フォンタンだから、睡眠に悪影響があるとはまだ言い切れないようです。

ただ、元々循環に問題があるのに加えて睡眠時無呼吸になると、影響は大きそうです。

睡眠の問題は、治療できるものもあると思うので、普段から注意しておいて、治せるものは治療した方が良いと思いました。

 

ボストン小児病院の心臓フィットネスプログラム

先天性心疾患者の体調維持に興味があります。

そのための、運動プログラムについて調べています。

ボストン小児病院のホームページを見てみました。

リンク

Cardiac Fitness Program | Boston Children's Hospital

まとめ

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ボストン小児病院の心臓リハビリ

目標

患者が達成できるとは思っていなかったレベルの身体活動に到達できる支援をすること

参加者

 あらゆるタイプの先天性心疾患または小児後天性心疾患の子供と大人

期間と頻度

  • 週に2回、1対1の60分間のセッション
  • 12〜16週間継続

内容

患者は

  • 心肺機能強化
  • 筋トレ
  • 柔軟

を行う(臨床運動生理学者と1対1)

 

その他に

  • 運動の原則を説明
  • 患者が自宅での運動計画を立てるのを支援
  • 健康的な食事についての情報 =栄養士から
  • 精神問題への対応も可能
  • 問題が発生した場合は、適切な緊急設備を敷地内に用意
  • 各患者の心拍数と心拍リズムをワイヤレスで常時監視

感想

このようなプログラムがあるのはよいなと思いました。

日々の生活の中での体調改善活動をやっていきたいですが、自己流だと問題がおこらないか心配です。正しい情報をもとに安心してやりたいです。

このようなプログラムは、「アメリカでも数少ないプログラムの1つ」と書かれているので、まだ一般的にはなってないようです。

フォンタンの男女差

フォンタン者の長期的な変化について気になります。フォンタン循環の男女差についての調査結果の論文がありました。

オランダの1病院60人の調査です。

 

論文情報

Sex differences in cardiac function and clinical outcome in patients with a Fontan circulation

Sophie L.Meyer他著

International Journal of Cardiology Congenital Heart Disease Volume 5

2021年10月

リンク

https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S266666852100121X

 

まとめ

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フォンタン者の男女差

フォンタン者の男女差を調査する最初の研究

13.0歳から22.3歳まで(平均16.6歳)の男女それぞれ30人ずつの調査

追跡期間は5.4から6.0年

女性の方が

  • 不整脈が多く、不具合が起きる人が多い
  • 1回の拍出量は少ないが、心拍数が多いため、1分間の拍出量は男女差なし
  • NYHAが悪い(ただし、症状自覚の違いの可能性も?)

注意点

  • 被験者が若く、数も少ない
  • 論文中の表に疑問点がある

   (男女別の範囲記述よりも全体の範囲記述の方が範囲が狭いなど)

 

感想

まだ、実態調査の初期段階で、男女差の原因分析はできてないようです。調査対象も1病院だけで、対象者の年齢幅も狭いので、今後の研究が必要だと思います。

患者ごとの個人差が大きいので、男女差に限らず、違いを把握して、適切な医療ができるようになってほしいと思います。