先天性心疾患と肝臓 2012年Mayo Clinic College of Medicineの論文

運動の結果、肝臓に悪影響があるという学会発表がありました。それを読んでから肝臓への影響について気になっています。

論文を読んでみました。Mayo Clinic College of Medicineの2012年の論文です。

これまでは心臓関連の学会の論文を読んでいましたが、初めて肝臓の学会の論文です。

 

論文情報

Congenital heart disease and the liver

Sumeet K. Asrani他著

 
HEPATOLOGY
  Volume 56, Issue 3 793-1189
 September 2012
 

リンク

https://aasldpubs.onlinelibrary.wiley.com/doi/full/10.1002/hep.25692

 

まとめ

f:id:lemondh:20200820150406p:plain

肝臓合併症のリスクと今後

リスク

  • 輸血または薬物関連肝炎
  • 心臓が押す力が弱い/低酸素症
     虚血性肝炎(門脈への流入が減るため)
     慢性肝虚血が肝線維症を引き起こす可能性あり

など

 

フォンタンの場合、

  • 門脈圧亢進症...門脈(腸から肝臓に向かう太い静脈)の血圧が異常に高くなる
  • 肝細胞がん
  • 肝硬変

など 

肝硬変

 肝硬変への進行は、最初のフォンタン手術から10年以内にさえ観察される場合あり

 肝繊維症

 肝繊維症の正確な発生メカニズムはわかってない

    炎症とは無関係に発症する可能性がある

    受動的なうっ血の結果として、類洞や他の常在細胞の反復的な機械的伸長と圧    迫によって引き起こされる可能性あり


  低酸素症とともに、肝臓構造と肝機能の大幅な変化の可能性あり

移植について

心臓が悪い時の肝臓移植、肝臓が悪い時の心臓手術などの問題がある

早めに心臓移植したら、肝臓の悪化が抑えられるのかや、肝臓疾患がすでに出ているときに心臓移植したら、疾患の進行が抑えられるのか等が解ってない

 

肝専門医の役割

先天性心疾患の患者の管理に肝臓専門医の力を期待

コンソーシアムで心臓と肝臓合わせてみることで最適な管理法ができる

感想

 この論文は先天性心疾患全体について肝臓の問題を書いているのですが、フォンタンの記述がとても多くなっています。やはり他の先天性心疾患よりも、フォンタン患者で肝臓に異常がある人が多いということだと思います。

フォンタン患者の肝機能障害の割合がやはり高いですね。

過去からの発生割合の変化のデータはありませんでした。あまり改善してないのかもしれません。(この論文は2012年の発表です)

 

それから、移植との関係の記述も多いです。

(今回のまとめにはあまり記載していません)

 

肝臓専門医と心臓専門医の連携で、両方を考慮した新しい診療方法が生まれることを期待したいです。

肝臓は機能が複雑で、化学的作用が役割なので、ちょっと難しいです。個人的には理解がまだ追い付いていません。

患者が生活の工夫等、自分で改善できることもあまりないかもしれません。

検査を受けることと、結果をよく見ることくらいでしょうか。

その他の情報

雑誌について

HEPATOLOGYは American Association for the Study of Liver Diseases (AASLD)

アメリカの肝臓の学会)の査読付き論文誌です。

Impact factorは14.679です。

Mayo Clinicについて

Mayo Clinic College of Medicineはミネソタ州ロチェスターを拠点とする私立の大学院専用の研究大学です。大学はメイヨークリニック学術医療センターの一部です。

メイヨークリニックは1846年に設立されたアメリカでも有数の病院です。