フォンタン患者の足に圧力をかける装置(ズボン)の効果

スポーツの分野で、運動後に圧力をかけるソックスをはくことで回復を促進する取り組みが行われています。足から血が返ってくるのを助ける効果を期待しているものです。

 (ただし、効果についてはありとなしで結果が割れているようです)

フォンタン患者についても、足の筋肉をつけることで血流を促進するということが論文化されています。そこで、筋肉とは無関係に、ソックスをはくなどして、血流を促進する効果について興味があり調べています。

2018年の論文を読んでみました。アメリカVirginia Commonwealth大学工学部と医学部の論文です。

論文情報

Externally applied compression therapy for Fontan patients
Joseph Hernandez (Department of Biomedical Engineering, School of Engineering, Virginia Commonwealth University)他著

Translational Pediatrics 2018 Jan  pp.14–22.

 

リンク

Externally applied compression therapy for Fontan patients


まとめ

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フォンタン者の脚に加圧する実験と効果

方法

左右それぞれ5つの袋がついたズボンを使う(メーカリンク

足先から根本の順番で順に足に圧力をかける

被験者2名

最初4日間一日140分間、次の2日間一日280分間自宅で実施

圧力は被験者の拡張期血圧(下の血圧)+15[mmHg]

結果

最終実施日の3日後に検査実施

2名とも

(I)運動時間、ピーク酸素量、換気しきい値(VT)の改善。
(II)有害事象なしに消耗するまで運動する能力。
(III)ピーク呼吸交換率(RERピーク)≥1.0の時の総運動時間を10%改善

心肺または血管の合併症は認められなかった

実施中に不快感を訴えた

 

注意点

運動検査は、(何もしなくても)1回目よりも2回目の方がよくなる傾向がある

 

ここで使っている装置はアメリカで販売されているもののようです。

感想

被験者が2名ととても少なく、6日間の短期実験である点にご注意ください。

6日間足を圧迫して血流を促進すると、運動に関する循環能力が上がるというのは、期待が膨らみますが、効果としてちょっとすごすぎるようにも思います。

また、体外から筋肉を押すのと体内の筋肉で血管を押すのとでは効果も同じではないので、この装置があれば筋肉をつけなくてもよいというわけではないと思います。

押し方も5個の袋を順番に膨らますといった粗い方法ではなく、手で下から上にマッサージするように連続的に力を加えれば、より血液が押されそうに思います。

 

個人的には、肝臓うっ血などの内臓の問題が改善したらいいのになあと思います。短期的には肝臓マーカの改善などがみられるとうれしいです。

ちょっと心配なのは安全性です。装着中に血流などを計測して、データを取りたいところです。

 

足を圧迫するだけなら、寝る前に装着して寝ている間にやってもらうことが出来れば、忙しい人も実施可能だと思います。人生の3分の1は寝ているわけですし。しかし、この研究では実施中に被験者が不快感を訴えているので、この装置のままだと、つけたまま寝るのは難しいかもしれません。

 

この論文だけでは、効果や実用性について、まだよくわかりませんので、これ以外の論文についても、引き続き調べていきたいと思います。

 

雑誌情報

Translational Pediatricsは、オープンアクセスの査読付き論文誌(隔月発行)です。

小児科分野(新生児、子供、青年期の医療のあらゆる側面)が対象です。

インパクトファクター(2019)は2.286です。