運動で先天性心疾患小児の動脈硬化が緩和される(2018)?

先天性心疾患の運動効果について調べています。先天性心疾患児は運動が少ない方が多い方よりも動脈硬化が進んでいるという2018年の論文がありました。

 カナダのUniversity of Saskatchewanなどの研究です。

 

論文情報

Physical activity modulates arterial stiffness in children with congenital heart disease
Natasha G. Boyes他著

Congenital Heart Disease Volume 13, Issue 4  23 March 2018


リンク

Physical activity modulates arterial stiffness in children with congenital heart disease: A CHAMPS cohort study

まとめ

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運動量と動脈硬化の関係

被験者

先天性心疾患者20人に年齢と性別をそろえた一般者を募集

方法

先天性心疾患者の運動多と運動少、一般者で動脈硬化(脈波伝播速度)を計測

結果

この研究の主な新しい発見は、先天性心疾患のある運動少の子供は、先天性心疾患の運動多の子供と健康で条件を合わせた対照者と比較して、動脈硬化を増加させた

 注:どちらも正常範囲内ではある?

平均歩数と動脈硬化は逆相関

非先天性心疾患者では、1日の平均歩数と動脈硬化の関係性は有意ではなかった

 

感想

 検定したわけではありませんが、一部ちょっと論文の結論に疑問があります。

結果の分布グラフ(こちらには未転記)を見てみると、確かに歩数が少ない方が動脈硬化傾向ですが、先天性心疾患児じゃない人もそうなっているようにも見えます。つまり、心疾患かどうかにかかわらず、運動しない人は動脈硬化傾向ということです。また、心疾患の方が動脈硬化になっているようには見えません。

(しかし、運動と動脈硬化の関係については正しい)

脈波伝播速度で評価していますが、最も悪い人でも11.5[m/s]です。動脈硬化の基準値は14[m/s]以上で12[m/s]以上は要注意となっていました。ですので、全員要注意レベル未満という結果です。

一般者の運動と動脈硬化の関係は、先行研究があるようです。

他の研究では、体脂肪率等も動脈硬化と関係ありとされていますが、本論文では無相関とされています。被験者が子供だからかもしれません。

12歳前後という子供でも、運動の多寡によって、動脈硬化(正確には脈波伝播速度)について違いがあるのは驚きでした。

思ったよりも早いうちから変化が起きているということだと思います。

 

注意点

脈波伝播速度の値はグラフから読みました。数値データとしては記載されていません。

 

雑誌情報

Congenital Heart Disease誌は子供と大人の先天性心疾患に焦点を当てた臨床論文誌です。子供と大人の先天性疾患(congenital defects)の研究と治療にのみ焦点を当てた唯一の論文誌と書かれています。

Impact factorは1.663です。