先天性心疾患者が競技スポーツをやりたくなったときのためのガイドライン

先天性心疾患者の運動について興味があります。European Heart Journalの先天性心疾患特集の中で、先天性心疾患者の競技スポーツへの参加についての論文がありました。

論文情報

Recommendations for participation in competitive sport in adolescent and adult athletes with Congenital Heart Disease (CHD): position statement of the Sports Cardiology & Exercise Section of the European Association of Preventive Cardiology (EAPC), the European Society of Cardiology (ESC) Working Group on Adult Congenital Heart Disease and the Sports Cardiology, Physical Activity and Prevention Working Group of the Association for European Paediatric and Congenital Cardiology (AEPC)

Werner Budts他著

European Heart Journal, Volume 41, Issue 43, 14 November 2020

 

リンク

Recommendations for participation in competitive sport in adolescent and adult athletes with Congenital Heart Disease (CHD)

 

まとめ

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先天性心疾患者の競技スポーツ参加の条件

16歳以上の先天性心疾患者に向けた文書

先天性心疾患者の運動の利点は十分に確立されている。

しかし、運動合併症のリスクは低いが、かなりのリスクがある

この論文で競技スポーツ実施時の判断手順を示す。

 

感想

 先天性心疾患者が競技スポーツをやるためのガイドラインが出ていることに驚きました。これまで見た中では、身体活動は推奨されている場合が多いですが、「競技はやめなさい」となっていることが多かったからです。

先天性心疾患者のやりたいことを安全に実施するための目安は大事だと思います。個々人に応じて、本来できることを禁止することはよくないですし、無理をして、命を縮めては意味がありません。

これまで一律に○○はダメとされていたことが、個人個人の状態をきちんと分析して可能不可能を判断するようになってきているなら、とても良い事です。

色々な分野、色々な形で、人々が良く生活していく仕組みが整ってきているということがわかりました。

 

細かい数値については、記載していません。原著をご覧ください。

 

先天性心疾患者は脚の痛みを訴える傾向がある(イギリスの論文)

脚が痛いとよく訴える気がしています。先天性心疾患者へアンケートした結果、兄弟よりも脚の痛みを訴える傾向があるという論文がありました。原因はまだ特定されていないようです。

論文情報

Leg Pains in Congenital Heart Disease – A Distressing Symptom of a Wider Problem

Suzie Hutchinson他著

Cardiology in the Young 24 July 2018

リンク

Leg pains in CHD: a distressing symptom of a wider problem

 

まとめ

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下肢の痛みについてのアンケート結果

合計220人の回答者

  • 時間帯 夜
  • 場所 膝、すね、筋肉を含む下肢
  • 対処法 鎮痛剤、マッサージ、休息

痛みを感じる人の割合が高い条件

回答者の93.6%が足が痛むと回答 兄弟は29.9%

原因不明

痛みを感じている人の方がアンケートに協力する可能性がある点に注意

 

感想

足の痛みはよく訴えてきます。

運動をする人の方が良く訴えてくるというのは意外でした。

素人考えでは、むしろ血行が良くなって、緩和されそうにも思っていました。

対処法は、アンケートに答えた人がやっている方法で、医学的に適切な方法かどうかはわかりません。

鎮痛剤を使わないといけないほどの痛みとすれば、大変な痛みなのだと思います。

これが何か良くない結果につながるサインかどうかはわかりませんが、痛みが強いと日常生活にも支障が出てきてしまいます。

さらに症状の研究が進んで、適切な対処法が確立されてほしいです。

 

先天性心疾患者が酸素をしながら運動すると効果が向上するか? スウェーデンの論文

先天性心疾患者の体調維持のための運動について興味があります。

運動中に酸素を吸うことで、効果がより上がるのではないかという実験の論文がありました。スウェーデンの論文です。本来とは別の意味で、興味深い結果になっています。

 

 

論文情報

Effects of exercise training, with or without supplemental oxygen, in adults with complex congenital heart disease

 

  Linda AshmanKröönström 他著

  International Journal of Cardiology Congenital Heart Disease Volume 3

 

リンク 

Effects of exercise training, with or without supplemental oxygen, in adults with complex congenital heart disease - ScienceDirect

 

まとめ

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運動中の酸素補給の研究と失敗

運動中に酸素を吸うことで、運動効果があがるという想定で研究

候補者の多くに断られる

  •  実験が平日の昼間。仕事を持っている人は参加できない。

 

さらに8人しか集まらなかったうちの2人が途中離脱。

  •  8人を2グループに分けていて、同じグループから2人抜けたので、そのグループの被験者は2人になってしまう。

 

結局、統計的な評価はできず。

 

感想

 SpO2が低い人が運動すると苦しくなる場合があるならば、酸素を補給しながら運動すれば、高強度の運動ができ、効果があがるとすると面白いと思って、読み始めました。しかし、結果は実験がうまくいかなかったということでした。

当初の期待とは違っていましたが、これはこれで興味深い結論だと思います。

当然ながら被験者も生活があるため、条件が厳しすぎると協力したくてもできないということだと思います。

運動の効果を評価しようとすると、ある程度の期間の運動実施が必要なので大変です。

参加できる実験設計が必要というのは個人的に新しい気づきでした。

 

小児先天性心疾患者向けのwebベースの運動プログラム ドイツの研究

先天性心疾患者の運動について興味があります。

小児先天性心疾患者向けのwebベースの運動プログラムと効果測定方法の提案についての論文を読みました。ドイツの論文です。

論文情報

Web-Based Motor Intervention to Increase Health-Related Physical Fitness in Children With Congenital Heart Disease: A Study Protocol

 

Michael Meyer他著

Frontiers in Pediatrics 27 August 2018

リンク

https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fped.2018.00224/full

 

まとめ

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オンライントレーニングと効果測定

先天性心疾患の子供は運動機能が低下し、かつ過度の運動制限をしている場合がある。この影響は成人になっても残っている。

親が子供を研究センターに連れていく手間の問題もあった。

これまでの研究の問題点

  • 評価方法の問題 最大酸素摂取量で評価していて、それ以外の運動の能力については注意が払われていなかった。
  • オンライン運動参加者の離脱の問題

 

参加者

70人の子供で24週間テストした。

 (効果の計測結果については記述なし)

 

感想

先天性心疾患対象のオンライン運動指導が海外でもまだ一般的ではないということに驚きました。

 オンラインで子供に運動させることの難しさはあると思います。仮に、画面を見ながらひとりで運動させたとして、うまくできる気がしません。おそらく正しい運動の方法が理解できないし、飽きてしまうように思います。

この論文で述べられている、最大酸素摂取量以外の計測にも期待します。運動の効果は、バランス改善によるけがの予防など、酸素摂取以外のものもあると思うからです。

 この論文には、効果についての記述がないのが残念です。今後、期待してみていきたいです。

雑誌情報

Frontiers in Pediatricsは、小児の患者ケアと子供の健康に関する基礎研究から臨床研究までを対象としています。オープンアクセスです。
Impact Factor は、2.634です。

 

アメリカ成人先天性心臓協会ACHAのウェビナー

海外の先天性心疾患者を支援する組織について興味があり調べています。

アメリカ成人先天性心臓協会(ACHA)のウェビナについて調べました。

今年から開催頻度が上がり、ほぼ毎週水曜日に行っています。

 

 

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ACHA ウェビナー

リスト

今年(2021)に入って行った内容と、これからの予告として載っている分をまとめました。

 

1月13日 コロナワクチンと先天性心疾患患者
1月20日 運動について(先天性心疾患の健康維持)
1月27日 成人後に先天性心疾患と診断されたときの解説
2月3日 ヨガ教室(健康的な生活)
2月10日 成人先天性心疾患患者の心不全の解説
2月17日 先天性心疾患者のデータ収集プロジェクトについて
2月24日 コロナによる孤立と心理的な影響
3月10日 症例解説 シミター症候群とShone Complex
3月17日 ACHAが公開している病院情報について
3月24日 先天性心疾患者の発達障害と心理社会的障害、認知症について
3月31日 瞑想 解説と実践
4月7日 ワーファリンと新しい経口抗凝固薬の長所と短所

 

リンク

ACHA Wellness Wednesdays - ACHA

 

開催時刻

ほぼ毎週水曜日、アメリ東海岸時間の19時から20時に行っています。

過去分のビデオも見ることが出来ます。

言語は?

言語は英語ですが、運動等を実践するときは、動画を見ればわかりますし、解説の場合も画面に出てくる図を見れば英語が苦手な人でもある程度はわかるかもしれません。

 

実際に見てみました

1月20日分の 「運動について(先天性心疾患の健康維持)」を見てみました。

中身は、

  • 運動のよい効果について
  • 運動のアメリカ政府のガイドラインの説明
  • 先天性心疾患の場合(アメリカ心臓協会の科学的声明の説明)
  • 主治医に相談しましょう
  • 頻度、強さ、1回の時間、種類を決めましょう
  • 目標を決めましょう(何をやりたいか、計測可能な目標、続けられる、など)

この会は資料を使った説明だけで、実技はありませんでした。

英語が少しわかれば、雰囲気は解りそうです。

感想

過去分も含めて、だれでも見られるのはとても良いと思います。

新しい話題もあるので、注目していきたいです。

アメリカの組織研究 the Adult Congenital Heart Association(ACHA)

海外では先天性心疾患の人々を支援をどのようにやっているかに興味があります。

そこで、支援組織について調べています。

アメリカのthe Adult Congenital Heart Association(ACHA)について調べました。

 

リンク

Adult Congenital Heart Association - Home - ACHA

 

まとめ

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ACHAの特徴

1998年設立

目的

教育、社会への働きかけ、研究を通じて、先天性心疾患の人生を改善し、寿命を延ばすこと

最高レベルのケアへのアクセスを増やし、患者と家族がそのケアを提供する医師と施設を特定できるようにする基準を開発する

 

活動の特徴

水曜日にウェビナーを開催

  • 医師が講演者になっている
  • 2021年から開催頻度が増えほぼ毎週開催になった

医療に関する情報のウェブサイトでの提供が充実

  • コロナウイルスに関する情報を、早くからウェブサイトで提供していました。
  • 地図から専門医を見つけられるようになっている

会費

  • 患者と家族は、無料
  • 医師は150ドルなど

感想

情報提供が充実している印象があります。

例えば、以前まとめた以下のような内容があります。

lemondh.hatenablog.jp

高頻度開催のウェビナーがこれからどうなっていくのか、期待しています。

会費など受益者からの直接の収益が少ないというのが気になります。

(受益者が寄付などをしている場合もあります)

 

次世代のフォンタン

フォンタンの医療技術の未来に興味があります。

次世代のフォンタンについてまとめた解説論文がアメリカ心臓協会にありました。

新技術についての部分をまとめてみます。

 

 

論文情報

Fontan Circulation of the Next Generation: Why It's Necessary, What it Might Look Like
次世代のフォンタン循環


Shelby Kutty他著

Journal of the American Heart Association. 2020; vol.9 Contemporary Review

 リンク

https://www.ahajournals.org/doi/10.1161/JAHA.119.013691

 

まとめ

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フォンタンを改善する新医療技術

 

幹細胞による再生医療

  • 幹細胞を注入したあと、元々の細胞にくっついて成長することを期待した効果よりも、パラクリン効果が注目されている。

 フォンタンの補助ポンプ

  • 引用されている論文は2010年と少し前の論文です。引用論文の方式はフォンタンの人工血管に補助ポンプを置く方法ですが、これとは違う方法も提案されています。
  • 以前読んだ論文もご覧ください。
  • lemondh.hatenablog.jp

感想

 究極の希望は、自分の細胞で心臓を作って置き換えることだと思います。まだ実現までに時間がかかるとしたら、それ以外の方法で通常の血液循環に近付く方法が出来ればよいと思います。

人工血管の問題発生頻度は多くはなさそうですが、自分の細胞で人工的に組織を作る初期の活用例になりそうに思います。