単純な先天性心疾患の患者にも、知能的精神的問題のリスクがある(デンマークの研究)
長期的なリスクを調べて、可能な限りリスクを避けたいと思います。先天性心疾患と知能的、精神的な問題発生についての論文を読みました。アメリカ心臓協会への投稿で、デンマークでの研究です。
論文にはコメントがついていたので、併せて読んでまとめています。
論文
Neuropsychological Status and Structural Brain Imaging in Adults With Simple Congenital Heart Defects Closed in Childhood
Benjamin Asschenfeldt 他著
2020年5月19日
Journal of the American Heart Association. 2020 Vol.9
リンク
https://www.ahajournals.org/doi/10.1161/JAHA.120.015843
まとめ
被験者
心房中隔欠損症(34人)または心室中隔欠損症(32人)の小児期の手術を受けた患者(18歳以上平均年齢25.6歳)を調査
他の先天性心臓異常、関連症候群(ダウン症候群など)、過去の脳卒中、最近の頭部外傷がある人は除外
結果
以下で統計的にスコアが低かった (小さな差ではあるものの)
- 知能指数
- 言語理解
- 知覚的推論
- 作業記憶
一方で、平均よりも高スコアな先天性心疾患患者の割合は、今回の比較対象(先天性心疾患じゃない人)よりも多かった。
処理速度には違いがなかった。
脳MRIの異常頻度は違いがなかった。(先天性心疾患患者は24%、対照群では29%)
先天性心疾患患者は精神疾患の発生率が高く、学齢期に特別な教育の必要性が高かった
この研究の問題点(限界)
今回の患者は1990年代に手術を受けているので、現在より手術方法が未熟であった影響があるかもしれない
手術を受けた年齢も、現在よりも高年齢の可能性がある
被験者の遺伝的分析を行っていない
被験者が少ない
過去の研究との違い
過去は心房中隔欠損や、心室中隔欠損の場合には、知能面での影響はないといされていた。ただし、観察対象が子供だったのが本論文との違い
感想
大人になってくると、色々な要因が絡み合ってくるため、結果から原因を見つけることが難しくなります。個人差も大きそうです。手術方法も変化が大きいので、将来的に結果が変化するかもしれません。そういう意味で、この論文の結論が正しいかどうかはわからないと思います。
ただ、先天性心疾患の患者に課題がある可能性がわかっていれば、早めに準備ができるので有効と思います。
様々な課題について調査が進み知見がたまることで、医療にとどまらず、教育面でも支援方法、トレーニング方法が確立されていくとよいと思います。