International Journal of Cardiology-Congenital Heart Diseaseの巻頭言

今年(2020年)にInternational Journal of Cardiology-Congenital Heart Disease誌が創刊されました。この巻頭言を見てみます。

先天性心疾患の医療の現状の課題がまとめられ、論文誌の目指す方向がかかれています。

論文情報

Welcome to “The new Journal, your Journal the International Journal of Cardiology-Congenital Heart Disease” for the most common and global inborn defect

Michael A.Gatzoulis HelmutBaumgartner Paolo F.Camici著

 

International Journal of Cardiology Congenital Heart Disease
Volume 1, July 2020

 

 

リンク

https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S266666852030001X

 

まとめ

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先天性心疾患の課題

最初は年に4回発行され、無料でアクセスできる論文誌になる

感想

新しい論文誌が生まれるということは、まだまだ未解決の問題があり、積極的な研究が行われるということだと期待しています。

テクノロジーの活用から、患者による長期的リスクの予防活動、QoLの改善まで、様々な分野が対象になっています。

この分野に入ってくる研究者が増え、医療がさらに発展し、患者が改善していってほしいと思います。

 

運動テストCPETの将来予測への活用(修復されたファロー四徴症の場合)

先天性心疾患者の運動について興味があります。心肺運動検査(CPET)の結果を使って、修復されたファロー四徴症患者の将来リスクを予測する可能性についてのメタアナリシス論文(過去の論文をまとめて分析した論文)を読みました。

論文情報

Cardiopulmonary Exercise Test (CPET) in patients with repaired Tetralogy of Fallot (rTOF); A systematic review

 

S.Alborikanabc(St Bartholomew's Hospital, London, UK)他著

International Journal of Cardiology Congenital Heart Disease Volume1, July 2020

リンク

https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S2666668520300501

 

まとめ

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ファロー四徴症者の心肺運動検査の結果と効果

論文の目的

  • 運動能力を決める要因を明らかにする
  • CPETデータで将来予測する証拠を説明する

分析内容

  • 2002年から2019年の21本の論文を分析
  • 平均年齢は25±7歳

結果

peakVO2は被験者の年齢とは関係がない(といっても被験者は30代程度まで)

昔の論文より、今の論文の方が数値が向上している

(年齢よりも手術方法で運動能力が影響されると考えている)

全体平均は68%(運動容量が低下している)

CPETは診断によく使われるが、論文上では使い方や根拠が確立されてない

運動能力の決定要因

  • 安静時の左心室・右心室の機能障害
  • ピーク運動時の左心室1回拍出量の減少
  • ピーク運動時の右心室収縮期圧力
  • Transannular patchでの手術

完全には特定できていない

 

感想

 修復されたファロー四徴症では、分析対象年齢も若いのですが、心肺テストの結果が良くない人が多いようです。

この分野の論文では、まだ分析方法が統一されていないとの結論でした。

一般に、体調悪化要因はいろいろで複雑であり、限定は難しいと思いますが、変化を早く察知して、対応可能になるとよいなと思います。

雑誌情報

International Journal of Cardiology Congenital Heart Disease誌は、できたばかりの論文誌で、この論文が掲載されているのがVol.1です。

 名前からしても、先天性心疾患の論文誌なので、よい論文がたくさん出るようになるとよいなと思います。

 

先天性心疾患における慢性心不全 --運動能力の問題--(AHA科学的声明をよむその3)

先天性心疾患の長期的リスクが気になります。

2016年にアメリカ心臓協会の科学的声明として、慢性心不全(heart failure)について書かれていました。

3回目として、先天性心疾患者と運動能力の問題(Exercise Intolerance)について書かれた部分をまとめます。

文書情報

Chronic Heart Failure in Congenital Heart Disease
        A Scientific Statement From the American Heart Association

Karen K. Stout他著

    Originally published19 Jan 2016

リンク

https://www.ahajournals.org/doi/10.1161/cir.0000000000000352

 

まとめ

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先天性心疾患と運動の問題

先天性心疾患患者の半数

 複雑な疾患者に一般的だが、修復済や、単純な疾患にも起こる

元々運動に問題があるために、悪化に気付かないこともある

 ←運動能力テストが有効

  トレッドミルやエルゴメータのテストで、治療の必要性や治療効果の判定が可能

 

患者間で運動能力に違いがある

 

原因

 心機能障害

  心室機能障害、弁疾患、流入・流出閉塞、不整脈、冠動脈疾患など

 治療の影響

  薬、手術の影響など

 血管性肺疾患

  肺高血圧

 胸部骨格の形

  脊柱側弯症などの筋骨格異常など

 末梢循環(可能性あり)

  骨格筋レベルでの反射等への影響

 鉄欠乏に起因する貧血

  一般者よりも必要とされるヘモグロビンレベルが高い場合もある

 

感想

本題の心不全からはちょっと離れている内容になっていますが、運動に問題を抱えるようになる人が多いようです。

 様々な要因が関係して、運動の問題として出てくるようです。

気づかないうちに悪化している状況は避けたいですね。徐々に変わっていくと変化がわからない場合もありそうです。定期的な検査によって数値的に評価出来れば少し安心だと思います。

 

 

開窓フォンタン 閉じると閉じないの違いは?

フォンタン手術の開窓は閉じるべきか?効果は何か?について興味があります。

開窓フォンタンを閉じた場合と閉じない場合のその後の状況についての論文を読みました。

アメリカMedical College of Wisconsin 2013年の論文です。

 

フォンタン開窓とは?

下半身から帰ってきた血液を肺動脈につなぐ手術がフォンタン手術ですが、その経路(多くは人工血管)に穴をあけて、心臓とつなぐのが開窓(fenestration)です。

 

論文情報

フォンタン開窓閉鎖と無再発生存

Fontan fenestration closure and event-free survival

Bartlomiej R. Imielski他著


The Journal of Thoracic and Cardiovascular Surgery Volume 145, ISSUE 1, P183-187, January 01, 2013

 リンク

https://www.jtcvs.org/article/S0022-5223(12)01117-8/fulltext

まとめ

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開窓フォンタンの開閉とその後の経過の比較

意図的に開窓を閉じるかどうか、いつ閉じるかという問題は未解決のまま

 

開窓のリスク

  •  チアノーゼ
  •  全身の血栓塞栓
  •  静脈うっ血
  •  血栓リスク増加

開窓の利点

  •  手術直後の効果
  •  中心静脈圧の低下

   以下のリスクの低下の可能性

    運動不耐性、たんぱく質喪失性腸症、可塑性気管支炎、徐脈性不整脈

 

開窓を閉鎖するかの判断(当院(Children's Hospital of Wisconsin?)の場合)

  •  フォンタン後1~3年でカテーテルして判断
  •  以下をもとに判断

  全身静脈圧

  心拍出量

  酸素飽和度のテスト閉鎖によって誘発された変化

 

本論文の条件

  •  1994年1月から2007年6月まで当院(Children's Hospital of Wisconsin?)で有窓フォンタン手術を受けた全患者を調査
  •  161人の患者が開放型に分類され、51人が閉鎖型
  •  被験者が若いため長期変化はわからない

感想

開窓を閉じるか閉じないか、閉じそうになったら広げるのかなど、色々気になりますが、答えは出ていないようです。どんどん変化している治療に対して、統計的に〇と×の結論を出すのは難しいのかもしれません。

フォンタンで開窓をした人の中での比較ですので、そもそも開窓フォンタンじゃない人は本論文では対象としていません。

引き続き調べていきたいと思います。

論文情報

The Journal of Thoracic and Cardiovascular Surgery誌は、

外科的介入に重点を置いた、心臓、大血管、肺、胸部の疾患に関する記事を扱っています。これは、米国胸部外科学会および西部胸部外科学会の公式雑誌です。

後天性心臓手術、先天性心臓修復、胸部手術、心臓と肺の移植、機械的循環サポート、その他の手術の技術と開発に焦点を当てています。

インパクトファクター4.880です。

 

40歳以上の修復された心室中隔欠損者でも、酸素摂取能力が低い

先天性心疾患の長期リスクを調べています。

手術で修復された心室中隔欠損者は、定期通院をしない場合も多いが、酸素摂取テストの結果が良くないとのデンマークの論文がありました。

論文情報

40歳以上の心室中隔欠損者の機能的能力

(Functional Capacity Past Age 40 in Patients With Congenital Ventricular Septal Defects)
Marie Maagaard他著

 

Journal of the American Heart Association. 2020;9

Department of Cardiothoracic and Vascular Surgery, Aarhus University Hospital Denmark

リンク

https://www.ahajournals.org/doi/10.1161/JAHA.120.015956

 

まとめ

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心室中隔欠損者の酸素摂取能力の分析

酸素を取り入れる能力を比較。加齢に伴う変化を調べたい。

手術で修復している人も、修復不要と診断され修復していない人も、酸素取得能力が低い。

これは、日常生活でも体感できるほどの違い。

心室中隔欠損の被験者が対照比較者に比べて、とりわけ運動不足なわけではない。

年齢が上がるにつれて、能力差が大きくなる

 

高齢者は昔の方法で手術していることに注意。現在の手術結果とは異なる可能性がある。(手術年齢が高い、肺動脈絞扼術を受けた人が現在よりも多い)

感想

 心内修復をしていれば、その後は一般者と同じ生活がおくれるものだと思っていました。しかし、統計的には、若年者であっても、酸素取得機能に制限があり、高齢者になると、それが拡大していることがわかりました。

やはり、定期的な検査をし続けることが大切だと思います。

  酸素摂取機能を改善する方法については、記載がありません。

 

先天性心疾患における慢性心不全 --影響--(AHA科学的声明をよむ その2)

先天性心疾患の長期的リスクが気になります。

2016年にアメリカ心臓協会の科学的声明として、慢性心不全(heart failure)について書かれていました。

2回目として、先天性心疾患者と心不全の関係について書かれた部分をまとめます。

 

論文情報

Chronic Heart Failure in Congenital Heart Disease
        A Scientific Statement From the American Heart Association

Karen K. Stout他著

    Originally published19 Jan 2016

リンク

https://www.ahajournals.org/doi/10.1161/cir.0000000000000352

 

まとめ

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先天性心疾患患者と心不全の関係
  • 先天性心疾患の直接的な影響

   弁異常 不正な血流(シャント) 閉塞 不整脈 単心室 心筋の機能不全   心臓の形が理想的でない影響

  • 心筋の構造の問題

   心臓の筋肉が通常と違っている(とくに右心室

  • 心臓への血流(冠動脈)の異常
  • 神経ホルモンの活性化

    BNP
    RAAS(レニン・アンジオテンシン・アルドステロン系)

      ←血圧などの調整にかかわるホルモン
    など

  • 心筋線維症
  • 心臓の形の変化

    長年の心臓への圧力、手術の影響によって肥大など形が変化する影響

 

感想

心臓の筋肉の作り(筋繊維の向き)などが特殊で、そのために、心臓の動きに問題が出る場合があるということを初めて知りました。血液の流れ方などのマクロ的違いは分かりやすいのですが、一見見えないミクロ部分にも問題がある場合があるということだと思います。

最初は問題なかったとしても、長期的には様々な変化があり、要注意なので検査結果をよく見て、知る必要があると思います。

 

 

先天性心疾患における慢性心不全 --問題と統計--(AHA科学的声明をよむその1)

先天性心疾患の長期的リスクが気になります。

2016年にアメリカ心臓協会の科学的声明として、慢性心不全(heart failure)について書かれていました。

統計の記述を見てみます。

論文情報

Chronic Heart Failure in Congenital Heart Disease
        A Scientific Statement From the American Heart Association

Karen K. Stout他著

    Originally published19 Jan 2016

リンク

https://www.ahajournals.org/doi/10.1161/cir.0000000000000352

 

まとめ

慢性心不全とは

心臓から血をうまく送れなくなる状態が徐々に悪化した状態

 

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慢性心不全の統計

先天性心疾患の心不全の問題

  • 発生する年齢が様々
  • 心臓の構造と外科的修復結果が個々人で違っている
  • 多様な原因
  • 疾患進行を調べる血液検査(バイオマーカー)がない
  • 信頼できるリスク予測方法や治療有効性の評価項目(end point)がない
  • 治療効果を実証する証拠が不足

統計

  • 小児期に先天性心疾患全患者の約5%
  • フォンタン手術後の患者の最大10%から20%
    フォンタン手術後有病率は成人期までにほぼ50%
  • 先天性心疾患成人8000人以上の全国調査で全死亡の26%

感想

心不全はわかったようなわからないような感じがあります。逆に例えば、「逆流がある」と言われれば、血が逆に流れているんだなと現象が頭に浮かんできます。これは、結果から付けられた分類なので、原因がイメージつかないということだと思います。

一般的な心不全患者と、先天性心疾患の患者では原因が違っている場合があり、一般患者用の診断方法や、治療方法がそのままでは使えない場合が多くあるということで、この文書が書かれているようです。

まだまだ、治療技術の進化が必要なようです。