成人先天性心疾患者で慢性的な痛みを感じている人は約3割

先天性心疾患の健康状態の傾向について調べています。

15か国で、痛みを感じている人の割合を調べた研究がありました。

 

論文情報

Pain in adults with congenital heart disease - An international perspective

AllisonLeibold 他著

International Journal of Cardiology Congenital Heart Disease
Volume 5, October 2021

 

リンク

Pain in adults with congenital heart disease - An international perspective - ScienceDirect

 

まとめ

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成人先天性心疾患者の痛みの割合調査

15か国から3832人の患者(18歳以上)を調査

患者の28.9%が中程度以上の痛みがあると回答

 一般者でも10〜15%程度は慢性的な痛みがあると回答している

痛みの有病率は年齢とともに増加

 

痛み有病率が高い国

 カナダ(36.1%)、インド(35.4%)、ノルウェー(34.3%)

痛み有病率が低い国

 日本(19.5%)、台湾(18.8%)

痛みがある人の3/4が活動を制限している

一方で参加者の83.5%は体調が良好以上であると回答している

術後の痛み 3か月後=1/3 2年後=17%

 (過去の研究結果 本研究では、手術直後の人は除外している)

 

感想

何らかの痛みがあれば、活動の制限につながっていくと思います。

痛みを感じることを減らせるケアが確立すればよいなと思います。

成人先天性心疾患のスポーツの安全性

先天性心疾患者にとって運動は有益ですが、リスクも気になります。スポーツの安全性についての論文がありました。イギリスの論文です。

論文情報

Safety of physical sports and exercise in ACHD

AnaBarradas-Pires(Royal Brompton病院)他著

International Journal of Cardiology Congenital Heart Disease Volume 4, August 2021

リンク

Safety of physical sports and exercise in ACHD - ScienceDirect

 

まとめ

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成人先天性心疾患者運動と注意点

一般論

定期的身体活動を含むアクティブなライフスタイルは、長期的な健康と幸福の重要な要素

成人先天性心疾患者の運動処方は、臨床評価と運動テストをもとにした専門家の評価に従って、運動中の有害事象の危険因子を特定し、個人ごとに運動の安全限界を決めるのが理想。

特定のリスクが存在する場合、運動の強度は、調整する必要がある。

その後、運動処方を定期的に見直し、危険因子が出現したり、治療に成功したりしたときに修正する必要がある。

個人ごとの違いが大きいため、運動処方では、多数の要因を考慮する必要がある

そのため、医師は難しく感じたり、リスクを強調しすぎたりする場合がある。

 

運動の種類

筋トレ

 動きありと動きなしに分けられる 動きなしは息止めをする場合があり、要注意

有酸素運動

 多くの成人先天性心疾患者に安全で有益 一部の人は要注意

 

運動中の注意信号

 めまい、失神、胸痛、動悸、呼吸困難

運動に注意が必要な人

不整脈のある人は治療するまで運動テストを控えるべき

重度の左心室流出路閉塞では、激しい運動・競技はすべきでない

 

運動処方

患者の運動処方の前に、

  • 詳細な病歴確認
  • 心電図(ECG)
  • 経胸壁心エコー
  • 運動テスト、(理想的にはCPETを含む)
  • ホルター心電図(不整脈がある場合)

を行うべき

確認項目

  • 心室機能
  • 肺動脈圧
  • 大動脈サイズ
  • 不整脈
  • 安静時および運動時の酸素飽和度

 

運動処方で提供するもの

感想

筋トレも2種類に分けて考える必要があるということを初めて知りました。

これまでは、等尺トレーニングも特に気にせずにやっていましたが、今後は注意したいと思います。

自己流の運動は、安全性に心配があります。データがたまって、それぞれの人に適した運動を決められるようになってほしいと思います。

 

fontan者の肝線維症は他要因とは症状が違うため、既存検査では見つけにくい(大阪市立大学の論文)

Fontan者の肝臓疾患について気になっています。大阪市立大学のグループが、Fontan後の肝線維症を分析し、一般的な肝線維化マーカ等と症状の関連性について評価する論文を発表していました。

 

論文情報

Assessing liver stiffness with conventional cut-off values overestimates liver fibrosis staging in patients who received the Fontan procedure

Yuki Cho他著

Hepatology Research Volume51, Issue5 May 2021

 

リンク

https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/hepr.13627

 

プレスリリース

https://www.osaka-cu.ac.jp/ja/news/pdfs2020/press_210307.pdf

 

まとめ

 

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fontanと肝臓線維化 検査手法の分析
  • 肝臓の固さ検査(超音波エラストグラフィ)は肝臓自体の固さよりも血圧(門脈圧)を検出してしまう
  • 血液検査の肝線維化マーカ(ヒアルロン酸、4 型コラーゲン7s、APRI、FIB-4 Index、FibroTest など)は、Fontan 者の肝線維化状況との関連性がなかった

感想

 これまでの肝臓の状況を検査する方法ではフォンタン者の肝臓の状態を正しく検査できないということです。

肝臓の組織をとる方法だと、負担も大きいと思います。血液検査などの負担が少ない方法でできるようになってほしいと思います。

 統計値では、今回の平均14.7歳の集団(22人中10代以下が17人)でも、肝線維化が進んでいるとのことなので、普段から注意する必要があると感じました。

 

雑誌情報

Hepatology Researchは、日本肝臓学会の国際論文誌です。

 
 

 

論文の内容ごとのまとめ

これまで見てきた論文などについて分野ごとにまとめてみました。

先天性心疾患の種類ごとのまとめ

フォンタンに関する論文- Life On Nature

ファロー四徴症に関する論文  - Life On Nature

合併症・別の疾患ごとのまとめ

長期リスク の論文 - Life On Nature

不整脈  - Life On Nature

肝臓  - Life On Nature

メンタルに関する論文- Life On Nature

COVID19に関する論文 - Life On Nature

ふだんの体調改善の課題のまとめ

運動の方法、効果などに関する論文 - Life On Nature

食事に関する論文・調査結果- Life On Nature

患者家族に関する論文 - Life On Nature

医療・社会制度についてのまとめ

新しい医療技術に関する論文 - Life On Nature

海外の患者支援の仕組みの事例 - Life On Nature

教育に関する論文 - Life On Nature

論文をまとめた論文

メタアナリシス・システマティックレビュー  Life On Nature

ガイドライン - Life On Nature

英国では2020年に心臓手術等の治療が10万件以上減少

2020年は特別な年でした。British Heart Foundationに、イギリスでの心臓治療の変化についてのレポートが2件ありました。

 

文献情報

1件目

 Over 100,000 fewer heart procedures and operations in England in 2020

 11 February 2021

 

リンク

Over 100,000 fewer heart procedures and operations in England in 2020

 

2件目

Heart surgery and other heart procedures fall by 39%

 11 March 2021

リンク

Heart surgery and other heart procedures fall by 39%

 

日本胸部外科学会のアンケート結果

  https://www.jpats.org/info/2020/1029_01.html

 

まとめ

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イギリスの心臓手術件数の変化(コロナの影響)
  • イギリスでは2020年に心臓手術が大きく減少している
  • パンデミックが始まって以来、英国では心臓病と脳卒中による少なくとも5,700人の過剰な死亡がある(ケアの遅れが原因である可能性)
  • 混乱の本当の規模はまだ不明
  • 今後何年にもわたって影響する可能性あり

日本では(日本胸部外科学会のアンケート結果)

  • 約半数の病院が手術数が減少と答えている
  • 減少した病院の減少割合は30~40%程度

先天性心疾患に限らず、心臓手術全体の結果です。

 

感想

心臓の手術を控えたことで体調が悪化する問題と、必要な手術の件数が今後増える問題とがあるようです。

まだ今後の影響はわかっていないと思いますが、早く落ち着いてほしいと思います。

コロナの影響で、手術まち状態が普段よりも長引いているとすると、心配です。

 

抗うつ薬を使っている成人先天性心疾患のリスク 男性の方が高い?

先天性心疾患者の精神面での問題が気になります。

成人先天性心疾患者で抗うつ薬治療を行っている人の死亡リスクに関する論文を読みました。

イギリスのRoyal Brompton Hospitalの分析です。

 

論文情報

Depression requiring anti-depressant drug therapy in adult congenital heart disease: prevalence, risk factors, and prognostic value
Gerhard-Paul Diller他著


European Heart Journal, Volume 37, Issue 9, 1 March 2016

リンク

https://academic.oup.com/eurheartj/article/37/9/771/2398441

 

まとめ

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抗うつ薬利用者の傾向(男女の違い)

2000年から2011年

6162人の成人先天性心疾患者のうち、204人が抗うつ薬療法を受けていた

男性と比較して女性患者は2倍の数

          (女性うつ病患者が多いのは一般者と同傾向)

しかし死亡リスクは男性の方が多い

抗うつ薬療法を受けている男性は、定期的な診察が出来ない場合がある

(女性はそうではない)

 

うつ病と診断されていても抗うつ薬治療をしていない人いる点に注意

 

感想

もし、男性抗うつ薬利用者の死亡リスク上昇が、定期的な医療を受けてないためだとすれば、対策は可能に思えます。

どのように支援体制を作っていくのかがポイントだと思います。

 

感染性心内膜炎のリスク:機械弁は長期的な影響あり

先天性心疾患が影響する疾患が気になります。代表的なものに感染性心内膜炎があります。手術で使われた人工材料と感染性心内膜炎の発症リスクの関係についての論文がありました。

論文情報

Incidence, risk factors, and predictors of infective endocarditis in adult congenital heart disease: focus on the use of prosthetic material

成人の先天性心疾患における感染性心内膜炎の発生率、危険因子、予測因子:補綴(人工)材料の使用に焦点を当てる

Joey M. Kuijpers他著

European Heart Journal, Volume 38, Issue 26, 7 July 2017

リンク

https://academic.oup.com/eurheartj/article/38/26/2048/2870519

 

まとめ

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機械弁と感染性心内膜炎のリスク

オランダの研究

調査対象14,224人

  • 女性50.5%
  • 年齢中央値33.6歳
  • 平均追跡期間 6.6年

発生率=1.33例/ 1000[人年]

 (成人先天性心疾患者の発生率は一般の約27〜44倍)

人工物は手術直後のリスク要因

機械弁は、その後もリスク要因であり続ける

人工物や機械弁だけが原因ではないのでご注意ください。

 

感想

感染性心内膜炎についてあまり知らないため、読んでみました。

機械弁は長期のリスク要因とのことですが、ここで書かれていない他の要因と比べて、どのくらい強い要因なのかはわかりません。

この分析対象の人の中に、感染性心内膜炎関連でなくなっている人もいるようです。

気を付けたいと思います。