感染性心内膜炎の対策(アメリカでの解説事例)

先天性心疾患患者が気を付けないといけない感染性心内膜炎の対策について調べています。アメリカの情報を見てみました。メドトロニック社のホームページに動画と解説が載っていました。人工弁置換をしたMike君が主人公です。

 

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感染性心内膜炎の原因

感染性心内膜炎の原因

皮膚の傷や、口の中の小さい切り傷からバクテリアが入ります。

 

大事なこと

  • 毎日2回歯磨き
  • 歯のすべての面をやわらかい歯ブラシでやさしく磨く
  • 歯肉に沿って磨く
  • 一日1回フロス
  • 下を軽く磨く
  • 顔や手を洗うなど清潔に
  • 動物やペットにひっかかれないように注意しましょう

 

止めましょう

  • 爪を噛んだり、裂いたり、ほじること
  • にきび、ほくろ、かさぶたを、とったり、掻いたりすること。

 

入れ墨やピアスを入れる前に医師にリスクを確認しましょう

 

病院に行きましょう

  • 5日(動画では3日)以上熱や悪寒が続くとき
  • 食欲がない、原因不明で体重が減っている
  • いつもより疲れる
  • 寝汗をかく

 

リンク

 

感想

皮膚からの侵入に対しても、口からと同じように注意を促しています。

 子供はよくかさぶたをとってしまうのですが、注意してもやってしまいがちです。

ペットや動物にも気を付けるというのは、言われてみればそうなのですが、考えていませんでした。

 

参考

メドトロニック社とは、心臓ペースメーカを中心とした医療機器メーカで、アメリカを由来とする企業です。傘下にチューブや、医療機器を製造するコヴィディエン社があります。

 

お願い

何かの判断材料にされる際には、必ず元文献をご覧ください。

感染性心内膜炎について

先天性心疾患で患者が注意することとして、感染性心内膜炎があります。

これを調べてみました。日本小児循環器学会のガイドラインの一部を参考にまとめました。

 

 

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歯磨きで心臓を守る

参考文献

日本小児循環器学会

  感染性心内膜炎の予防と治療に関するガイドライン(2017 年改訂版)

https://www.j-circ.or.jp/cms/wp-content/uploads/2020/02/JCS2017_nakatani_h.pdf

   

どのくらいの人がかかる?

10万人当たり1年間にかかる人の数

成人先天性心疾患患者  110人
先天性心疾患の小児  41人
一般の人  3人 ~ 7 人
一般の小児  0.34人 から0.64人

先天性心疾患の人はそうでない人に比べて割合が高いです。大人の方が高割合になっています。

なりやすい人は?

1.高度リスク群(感染しやすく,重症化しやすい患者)
• 人工弁
• 複雑性チアノーゼ性先天性心疾患(単心室,完全大血管転位,ファロー四徴症)
• 体循環系と肺循環系の短絡造設術を実施した患者

• 過去にかかった人
2.中等度リスク群(心内膜炎発症の可能性が高い患者)
• ほとんどの先天性心疾患
• 後天性弁膜症
• 閉塞性肥大型心筋症
• 弁逆流を伴う僧帽弁逸脱
• 人工ペースメーカ,植込み型除細動器などのデバイス埋め込み患者
• 長期にわたる中心静脈カテーテル留置患者

なりやすいのはどんな時?

  • 歯石除去・抜歯など
  • 虫歯・歯周病
  • 皮膚や軟部組織の感染
  • 手術
  • アトピー性皮膚炎(全体で皮膚疾患が占める割合は1%だが重症化リスクあり)
  • 免疫抑制薬を長期間使用
  • 肺炎 (まれに)
  • ピアス挿入・刺青(症例報告が散見)
  • 歯磨き、食事で口の中が傷ついたとき
  • 乳歯が自然に抜けた際のリスクは比較的少ない

予防方法(患者自身の)は?

  • 口の中の衛生管理
  • アトピー性皮膚炎の場合には皮膚科受診

病院に行くべきなのはどんな時?

原因のはっきりしない発熱が4 日以上続くとき

 

気を付けること

歯科や病院を受診する際に リスクをもつことを自己申告する

心疾患の主治医にあらかじめ対応を質問しておく

感想

歯石除去にリスクがあり、食事や歯磨きなどで口に傷がついても感染する場合があるとは知りませんでした。単に虫歯にならなければよいのかと思っていました。

普段から口の中をきれいにする習慣をつける必要がありますね。

皮膚病もリスクありということなので、これも気を付けたほうがよさそうです。

医療処置をするときに予防的に抗菌剤を使うかどうかについて意見が割れており、国によってガイドラインが異なっているようです。(日本では使用を推奨している場合が多い)

 

お願い

何かの判断材料にされる際には、必ず元文献をご覧ください。

 

先天性心疾患の運動方法についてのまとめ

先天性心疾患の運動方法について調べています。

ここまで調べたことをまとめてみます。

 先天性心疾患の中で、どの疾患を対象にした文書かによっても指示が大きく異なってきます。実施前に医師の指導を受けるべきというのは、共通の指示でした。

 

以下では、出典を(かっこ)で示しました

全体

現時点では、適切な運動レベル、頻度等確定していない

運動のリスクも不明な点が多い

各所で指示が異なっている場合がある(運動強度や頻度)

 

運動の強度と頻度

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有酸素運動の指示の違い

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筋トレと呼吸筋トレーニン

運動のリスク

運動中のリスク

一部の疾患以外は心停止リスクは少ない

長期的な影響

悪影響の可能性がわかっていないものがある

 肝臓などのうっ血、繊維化を促進する可能性

 不整脈を誘発する可能性

 

感想

まだまだ分からない点が多いようです。

特に、長期的な悪影響が気になります。

例えば、フォンタン患者であっても、運動したほうが体調が良いという報告が多く、かなり高強度の運動を勧めているものもありますが、一方で肝臓などを傷めてしまうリスクを指摘している論文もあります。

有酸素運動については指示の幅が広く、どこが正しいのかわからないという感じです。

今後も、新しい調査結果を反映しながら、このまとめを更新していきます。

リンク

この文書は、以下のリンクの調査結果をまとめました。

lemondh.hatenablog.jp

フォンタンの人工血管は一生そのままでいい?

日本小児循環器学会雑誌(2020)にフォンタンの人工血管の長期的な変化に関する

症例報告Editorial Commentがありました。

論文情報

心外導管型フォンタン手術後遠隔期に導管狭窄をきたした2例

満尾 博九州大学病院心臓血管外科)他

Pediatric Cardiology and Cardiac Surgery 36(1): 84-89 (2020)

リンク

症例報告

Editorial Comment

 

わかったこと

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フォンタンの人工血管の長期的な変化の可能性

3歳ごろのとても小さいときに人工血管を入れて、それをそのまま一生使っていけるのかについては、素朴な疑問としてあります。人工血管自体は伸びなくても、周辺の血管が余分に成長してくれれば、問題ないのかななんて考えていました。

結論として、人工血管が問題となる可能性は発生確率としては低いようです。

想定される問題の原因は、

  • 成長によって、血管が伸ばされることによって内径が狭くなるということ
  • 血管が折れ曲がってしまうことで、流れが悪くなること

の二つがあります。

(やはり、周辺の血管が余分に伸びて完璧に補ってくれるわけではなさそう)

このうち、折れ曲がりの方が問題が多い模様です。

折れ曲がった部分が血栓等でさらに狭くなり、流れが悪くなることで様々なところに問題が出てくるようです。

問題の発見も微妙で、手術を行うかどうかの判断も難しいそうです。

感想

発生確率は高くないということですが、ゼロではありません。

しかし、検査を怠らないようにすることが大事だと思います。

 

アメリカ心臓協会(AHA)の筋トレの解説(2007)

アメリカ心臓協会による筋トレの解説(2007年改訂版)を読みました。各種心臓疾患患者に向けた内容です。

論文情報

題名
Resistance Exercise in Individuals With and Without Cardiovascular Disease: 2007 Update

A Scientific Statement From the American Heart Association Council on Clinical Cardiology and Council on Nutrition, Physical Activity, and Metabolism

著者

Mark A. Williams 他

 

掲載誌

Circulation. 2007  Volume 116, Issue 5 572–584

AHA Scientific Statement

リンク

CIRCULATION AHA

まとめ

2000年に出された文書の改訂版です。

内容がとても幅広いので、一部についてまとめてみます。

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筋トレの効果

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筋トレのやり方

各種疾患ごとの効果や注意点が書かれています。 その為、先天性心疾患に特化した記述はそれほど多くありません。

一部の疾患では筋トレを行う際に注意が必要ですが、ほとんどの場合には、低リスクと書かれています。逆に、息止めや重すぎる負荷をかけずに、リスクなく筋トレをするようにすべしということでしょう。

筋トレだけではなく、有酸素運動と組み合わせてやることを勧めています。

一つ一つの運動(例えば、上腕二頭筋を鍛えるにはどうするかなど)についての細かい説明は本文には書かれていません。

感想

 全身にわたるかなり本格的な筋トレを勧めていたのが意外でした。トレーニングしていない部位は強化されないので、くまなくやるように勧めています。ただ、あまり時間や手間がかかると続けられなくなる人が多くなるのも問題ということもあるようです。

個人的には全く筋トレの知識がないので、専門家にコーチングをしてもらう必要を感じました。

注意点

 何かの判断材料にされる際には、必ず原著に当たってください。

 

在宅運動プログラムでフォンタン患者の生活の質を上げられる??

Online Journal であるCongenital Heart Disease誌に、「家庭内での運動プログラムでフォンタン患者の身体的生活の質を上げられるか?」という論文がありました。(2016)

ウィスコンシン小児病院の研究です。

 

論文情報

タイトル

Can a Home-based Cardiac Physical Activity Program Improve the Physical Function Quality of Life in Children with Fontan Circulation

 

著者

Roni M. Jacobsen (Division of Pediatric Cardiology, Department of Pediatrics, Medical College of Wisconsin)他

掲載雑誌

Congenital Heart Disease Volume 11, Issue 2 March/April 2016 Pages 175-182

AAP YOUNG INVESTIGATOR ABSTRACT

(16 February 2016)

リンク

link

 

まとめ

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在宅トレーニン

 

目的

フォンタン患者の在宅身体活動プログラムの安全性、実現可能性、および利点を評価

実験対象

  • 8歳から12歳までの合計14人の子供
  • 中程度以上の強度の運動活動による制限がない子供
  • 70%はもともと活動的と回答している人だった

期間

 12週間

検証方法

実験途中

 日記、電話での質問、Fitbit

実施前後

 20mシャトルラン 各種計測

レーニング内容

DVDまたは紙の配布資料でやり方を示す

週に3〜4回の動的および静的な家庭用エクササイズ45分間と3つの対面エクササイズセッション。

結果

  •  シャトルランの成績は向上
  •  バイタルサインには変化なし
  •  本人のPedsQLは変化なし
  •  親からみたPedsQLは改善
  •  被験者はやる気のある人たちだった点に注意が必要

 

感想

2016年以前の段階では、在宅運動プログラムの評価はまだ少なかったようです。現在アメリカでは、どのくらい在宅での運動プログラムが実施されているのか、気になります。 

運動はほぼ毎日やるとしたときに、毎回病院でやるのは無理だと思います。そこで、在宅で自分達で管理してできる必要があります。その意味で、この論文はそのあたりを詳しく書いてあるものと期待していました。しかし、内容として、すこし物足りない論文でした。

 運動の内容が同じで明確に提示してあれば、在宅でも、病院でも運動の効果は同じであるのは当然だと思います。

 病院と在宅の違いは何かを明らかにして、そこを解決する手段を提示しないといけないと思うのですが、書かれていません。被験者がどのように運動しているのか、どんな困難があったのかも質問しているのかもしれませんが、論文中には書かれていません。

また、具体的にどのような運動をしたのかについても書かれていません。

 

 

スーパーフォンタンは可能か??

The Journal of Thoracic and Cardiovascular Surgeryという雑誌に「Super-Fontan: Is it possible?」という投稿がありました。

 

出典

The Journal of Thoracic and Cardiovascular Surgery

March 2018Volume 155, Issue 3, Pages 1192–1194

Brief Research Report

著者

Rachael Cordina, 他

リンク

https://www.jtcvs.org/article/S0022-5223(17)32368-1/fulltext

 

まとめ

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スーパーフォンタンの特徴

 

どういう人か?

スーパーフォンタンとは優れた運動能力を備えたフォンタン患者と定義されています。

オーストラリアとニュージーランドのフォンタン患者で16歳以上、2010年以降にCPETの検査を実施した人133人のうち14人(11%)が優れた運動能力を持っている人でした。

その中で、身体活動レベルに関する医療記録があった11人を見ると、

全員が中程度から激しい活動に参加していました。

 週に3回以上のスポーツ活動。

全員がフルタイムで雇用または勉強しています。

平均追跡期間は3.8±2.1年でした。フォローアップ期間中に記録された主要な臨床事象はありません。

 

平均年齢24歳、(範囲は16〜34歳)です。

身体的傾向

  • 弁逆流少
  • 大動脈閉塞がない
  • または大きな不飽和化(36%は小さな開窓があった)
  • 被験者の21%に旧式フォンタン(APC
  • 21%には以前に不整脈心筋焼灼術とペースメーカー
  • 14%には軽度から中程度の収縮期心室機能障害

留意点

選ばれた人は若い人になっています。この状態が長期的に継続するのかは現状ではわからないと書かれています。

掲載雑誌について

Journal of Thoracic and Cardiovascular Surgeryは、心臓胸部外科、心臓病学、肺医学、および血管疾患を対象とする医学雑誌です。

米国胸部外科学会および西部胸部外科学会の公式雑誌です。

 

感想

まだ、最終的な結論には至っていない様ですが、一部のフォンタン患者に、心疾患がない人と同レベルの運動能力の人がいるようです。

必ずしも、身体的特徴が良好なわけではないのに、高い運動能力を示しているのが、興味深いです。

脈がよくないのはペースメーカを入れてしまえば運動に支障がなくなるが血管が狭い等の疾患は治せないとも、運動していても脈の異常には効果がないとも解釈の可能性があるように思います。

多くの人が元気で暮らしていけるように、何をすればよいのか、明快になっていくと嬉しいですね。

 

注意点

 論文を参考に何かの判断をされる際には、必ず原著に当たってください。